ある池にメダカは何匹いるのか。その数はこれから増えるのか、減るのか。
同じ種の個体が集まって暮らす「個体群」には、密度・年齢構成・成長パターンといった特徴があります。
個体群のふるまいを数量的にとらえる方法と、個体数が変動するしくみを学びましょう。
ある地域に生息する同種の個体の集まりを個体群といいます。シカの群れのように集団で生活するものも、クマのように単独で暮らすものも、同じ地域で交配し合う同種個体の集まりであれば個体群です。
個体群の大きさを表すには、単位面積(または単位体積)あたりの個体数である個体群密度を用います。たとえば「1 m2あたり15個体」のように表します。
調査対象地にいくつかの区画(方形枠)を設け、区画内の個体数を数えて全体を推定する方法です。植物やフジツボなど、移動しない生物に適しています。
全個体数 = 区画内の平均個体数 × (調査対象地の面積 ÷ 1区画の面積)
動き回る動物の個体数を推定するには標識再捕法を使います。手順は次の通りです。
たとえるなら、赤いビーズ100個を白いビーズの入った袋に混ぜ、よくかき混ぜてからすくい取ったとき、赤の割合から全体の数を逆算するのと同じ原理です。
個体群を年齢ごとに区分し、それぞれの個体数を積み上げて図示したものを年齢ピラミッド(齢構成)といいます。年齢ピラミッドの形から、個体群の今後の動向を予測できます。
| 型 | 別名 | 形の特徴 | 個体群の将来 |
|---|---|---|---|
| ピラミッド型 | 幼若型 | 若齢層の割合が大きい | 個体数が増加する |
| つりがね型 | 安定型 | 各年齢層の割合がほぼ均等 | 個体数が安定する |
| つぼ型 | 老齢型 | 若齢層の割合が小さい | 個体数が減少する |
現在の日本の人口ピラミッドはつぼ型で、少子高齢化による人口減少が予測されています。
同時期に生まれた個体について、各年齢での生存個体数や死亡率をまとめた表を生命表といいます。生命表にもとづいて、生存個体数の変化をグラフにしたものが生存曲線です。縦軸に生存個体数(対数)、横軸に相対年齢をとります。
| 型 | 死亡パターン | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| I型(晩死型) | 高齢になるまで死亡率が低い | 大型哺乳類・ヒト | 少産で親が子を保護 |
| II型(平均型) | 各年齢で死亡率がほぼ一定 | 鳥類・小型哺乳類 | 中程度の産子数 |
| III型(早死型) | 発育初期の死亡率がきわめて高い | 魚類・無脊椎動物 | 多産で親の保護なし |
変動の激しい環境では、多産・高い分散力・速い成長といった特徴をもつr-戦略者(例:昆虫・一年生草本)が有利です。一方、安定した環境では、少産・大きな子・親による保護といった特徴をもつK-戦略者(例:大型哺乳類・樹木)が有利です。rは内的自然増加率、Kは環境収容力に由来する名称です。
もし食物も空間も無限にあり、生まれた子がすべて生き残って次の親になれるとしたら、個体数はどうなるでしょうか。答えは「指数関数的に(ねずみ算式に)増え続ける」です。
資源に制限がない理想的な条件では、個体数は世代を重ねるたびに一定の倍率で増え続けます。これを指数関数的成長(J字型曲線)といいます。しかし、現実にはこのような増え方が長く続くことはありません。
現実の環境では食物や生活空間に限りがあるため、個体数が増えるにつれて1個体あたりの資源が減り、増殖率がしだいに低下します。その結果、成長曲線はS字型(ロジスティック曲線)を描き、ある上限値に収束します。この上限値を環境収容力(K)といいます。
個体群密度の上昇が個体や個体群に影響を与える現象を密度効果といいます。密度効果は動物にも植物にも見られます。
アズキゾウムシをさまざまな密度で飼育すると、親虫の密度が高いほど1匹あたりの羽化個体数が減少します。密度が高いと卵が親に踏みつけられて破損することなどが原因です。
ダイズを高密度で栽培すると、1個体の重量は低密度より小さくなります。しかし、単位面積あたりの全体の収量(=個体の重量 × 個体数)は密度にかかわらずほぼ一定になります。これを最終収量一定の法則といいます。
同種の個体間で食物・空間・配偶者などの資源をめぐって起こる競争を種内競争といいます。個体群密度が高いほど種内競争は激しくなり、個体群の成長を抑制する主な要因となります。
トノサマバッタでは、低密度で育つと緑色の孤独相(後脚が頑丈で跳躍に適する)になり、高密度で数世代飼育すると黒ずんだ体色の群生相(前翅が長く飛翔能力に優れ集合性が強い)になります。個体群密度の違いによって形態や行動に著しい変異が生じる現象を相変異といいます。群生相は環境の悪化した生息地を離れ、集団で長距離移動するのに適しています。
動物には、同種の他個体を排除する空間を確保するものがいます。この排他的な空間をなわばり(テリトリー)といいます。
なわばりが大きいほど得られる食物などの利益は大きくなりますが、維持する労力(パトロール・威嚇など)も大きくなります。最適ななわばりの大きさは、利益と維持コストの差が最大になるところです。
たとえばアユは、川底の藻類が豊富な場所になわばりを持ちます。しかし、密度が高くなりすぎると維持コストが利益を上回るため、なわばりを解消して群れアユになります。
シジュウカラのつがいの除去実験では、除去後に別のつがいが移入して縄張り数はほぼ変わらず、繁殖するつがいの数が安定しました。なわばりには個体群密度を安定させる効果があるのです。
個体群は、密度・年齢構成・成長パターンといった数量的な特徴をもち、それらは環境条件や種内競争によって絶えず変動しています。個体群密度が上がれば密度効果で成長が抑制され、なわばりや群れの形成が個体群のふるまいに影響を与えます。
この節で学んだ基本事項を確認しましょう。
標識再捕法において、1回目に100個体を捕獲・標識して放し、2回目に150個体を捕獲したところ、そのうち10個体に標識があった。この個体群の推定個体数を求めよ。
N = 100 × 150 ÷ 10 = 1500個体
年齢ピラミッドの3つの型を挙げ、それぞれの個体群の将来を述べよ。
ピラミッド型(幼若型):若齢層が多く、個体数は今後増加する。つりがね型(安定型):各年齢層がほぼ均等で、個体数は安定する。つぼ型(老齢型):若齢層が少なく、個体数は今後減少する。
個体群の成長曲線がS字型になる理由を、「環境収容力」「種内競争」の語を用いて説明せよ。
個体数の増加に伴い食物や空間などの資源が不足し、種内競争が激化する。その結果、出生率が低下して死亡率が上昇し、個体数の増加速度がしだいに低下して環境収容力(K)で頭打ちとなるため。
生存曲線のI型・II型・III型それぞれの特徴と代表的な生物を述べよ。
I型(晩死型):高齢まで死亡率が低く、寿命が近づくと急速に死亡。大型哺乳類・ヒト。II型(平均型):各年齢で死亡率がほぼ一定。鳥類・小型哺乳類。III型(早死型):発育初期の死亡率が極めて高い。魚類・無脊椎動物。
この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
次の文中の空欄( ア )〜( キ )に入る適切な語句を答えよ。
ある地域に生息する同種の個体の集まりを( ア )といい、単位面積あたりの個体数を( イ )という。動き回る動物の( イ )を推定するには( ウ )を用いる。( ア )の年齢構成を図示したものを( エ )という。( エ )の形がピラミッド型のとき、個体数は今後( オ )すると予測できる。食物や空間に制限がない条件での成長曲線は( カ )字型となり、制限がある場合には上限値である( キ )に収束するS字型となる。
ア:個体群 イ:個体群密度 ウ:標識再捕法 エ:年齢ピラミッド オ:増加 カ:J キ:環境収容力(K)
個体群の基本用語の確認問題です。ピラミッド型は若齢個体が多いため将来の増加が見込まれます。S字型曲線(ロジスティック曲線)では、環境収容力Kが個体数の上限となります。
(1) ある湖で魚を200個体捕獲し、すべてに標識をつけて放した。数日後に300個体を捕獲したところ、標識個体は12個体であった。この湖の推定個体数を求めよ。
(2) 上の推定で、2回目の捕獲までの間に標識個体が一部死亡していた場合、推定値は実際の個体数に比べて大きくなるか小さくなるか。理由とともに50字以内で述べよ。
(1) N = 200 × 300 ÷ 12 = 5000個体
(2) 大きくなる。標識個体の死亡で再捕獲数mが減るため、N = Mn/mのmが小さくなり推定値が実際より大きくなる。(48字)
(1) 基本公式 N = Mn/m の適用です。
(2) 標識再捕法は「標識個体が均一に混在する」ことが前提です。標識個体の死亡は再捕獲数mを減らし、公式から推定値Nを過大にします。
ある研究者が、容器内でウキクサ(浮草)を培養した。以下のグラフは、ウキクサの葉状体数の経時変化を示している。
初期:48枚 → 4日後:94枚 → 8日後:175枚 → 12日後:310枚 → 16日後:480枚 → 20日後:620枚 → 24日後:650枚
(1) この実験における環境収容力はおよそ何枚と推定されるか。
(2) 16日目以降、増殖率が低下した要因として考えられることを2つ挙げよ。
(3) 液体肥料の濃度を2倍にして同様の実験を行った場合、環境収容力はどうなると予想されるか。理由を含めて60字以内で述べよ。
(1) 約650枚
(2) 水面が葉状体に覆われて光の獲得が困難になった。栄養塩類が消費されて不足した。
(3) 栄養塩類の供給量が増えるため環境収容力は大きくなるが、光や水面面積は変わらないため、上限はそれらの制約を受ける。(55字)
(1) 20日目と24日目の個体数がほぼ変わらないことから、環境収容力に達したと判断できます。
(2) ウキクサは水面に浮かぶため、密度上昇による光の奪い合いと、培地中の栄養塩類の枯渇が主な制限要因です。
(3) 環境収容力は複数の要因で決まります。1つの要因(栄養)が緩和されても、別の要因(光・空間)が制限となるため、単純に2倍にはなりません。