あなたの体は、約37兆個の細胞でできています。
では、「細胞」とは何でしょうか──いつ、誰が発見し、なぜ「生命の基本単位」と呼ばれるのか。
生物学の出発点であるこの問いに、一緒に答えを見つけていきましょう。
17世紀のイギリス。科学者ロバート・フックは、自作の顕微鏡でコルクの薄片を観察しました。 すると、そこには無数の小さな区画が整然と並んでいるのが見えました。 フックはその一つひとつを「cell(小部屋)」と名付けました──1665年のことです。
ただし、フックが見たのはコルクの死んだ細胞の残骸、つまり細胞壁だけでした。 生きた細胞の中身を見たわけではありません。
生きた細胞を初めて観察したのは、オランダのレーウェンフックです。 レーウェンフックは布地の品質管理に使うレンズを改良して、当時としては驚異的な倍率の顕微鏡をつくり上げました。 彼はこの顕微鏡で池の水を覗き込み、そこに「微小動物」が泳いでいるのを発見しました。 さらに精子や赤血球など、さまざまな細胞を観察しています。
フックが名付けた「cell」は、ラテン語の「cella(小さな部屋)」に由来します。修道院の僧房や蜂の巣の小部屋を指す言葉です。フックがコルクを観察したとき、その構造が修道院の小部屋の並びに似ていたことから、この名前がつけられました。
面白いことに、フックは「細胞」の中身(原形質)には気づいていませんでした。彼が見ていたのは死んだ細胞の「外壁」だけだったのです。生命の最小単位を初めて目にしながら、その本質には届かなかった──科学の歴史にはこうした「あと一歩」のエピソードがたくさんあります。
フックやレーウェンフックの発見から約170年。顕微鏡の性能が上がり、さまざまな生物の細胞が観察されるようになりました。 そして19世紀前半、ある大きな「気づき」が生まれます。
1838年、ドイツの植物学者シュライデンは「すべての植物は細胞からできている」と主張しました。 翌1839年、動物学者シュワンがこれを動物にも拡張し、「すべての生物は細胞からできている」と提唱しました。 これが細胞説の誕生です。
1855年、ドイツの医学者フィルヒョーは、もう一つの重要な原則を付け加えました。 「すべての細胞は、既存の細胞から生じる」──つまり、細胞は無から生まれるのではなく、かならず親の細胞が細胞分裂することで新しい細胞が生まれるのです。
| 年 | 人物 | 貢献 |
|---|---|---|
| 1665 | ロバート・フック | コルクの観察で「cell」と命名 |
| 1670年代 | レーウェンフック | 生きた細胞(微生物・精子・赤血球)を初観察 |
| 1831 | ブラウン | 植物細胞に核を発見 |
| 1838 | シュライデン | 植物の細胞説を提唱 |
| 1839 | シュワン | 動物にも拡張し、細胞説を確立 |
| 1855 | フィルヒョー | 「すべての細胞は細胞から」を提唱 |
細胞説が登場する以前、生物の体のつくりは種ごとにまったく異なるものだと考えられていました。植物と動物はまるで別世界の存在であり、共通の構造原理があるとは誰も思っていなかったのです。
シュライデンとシュワンが「植物も動物も同じ細胞という単位からできている」と示したことは、生物学における統一原理の発見でした。これはちょうど、ニュートンが「地上のリンゴも天空の月も同じ万有引力で動いている」と示したのに匹敵するインパクトをもっています。
さらにフィルヒョーの「すべての細胞は細胞から」という命題は、当時まだ信じられていた自然発生説(生物は無生物から自然に発生する)を否定する有力な根拠にもなりました。パスツールの有名な実験(1861年)と合わせて、自然発生説は完全に否定されていきます。
細胞はとても小さいため、ほとんどの場合、肉眼では見えません。 細胞を観察するには顕微鏡が必要です。 では、どんな種類の顕微鏡があり、どこまで小さなものが見えるのでしょうか。
顕微鏡の性能を表す最も重要な指標が分解能です。 分解能とは、「2つの点を2つとして区別できる最小の距離」のことです。 分解能が小さいほど、より細かい構造を見分けることができます。
たとえば、あなたの肉眼の分解能は約0.1 mm(100 μm)です。 つまり、0.1 mmより近い2つの点は、1つの点にしか見えません。 多くの細胞はこれより小さいので、肉眼では見えないのです。
光学顕微鏡は、可視光線を使って試料を拡大する顕微鏡です。 分解能は約0.2 μm(200 nm)で、肉眼の約500倍の細かさまで見分けられます。 大部分の細胞や、核・葉緑体・ミトコンドリアといった大きな細胞小器官を観察できます。
電子顕微鏡は、光の代わりに電子線を使います。 電子の波長は可視光よりはるかに短いため、分解能は約0.2 nmと、光学顕微鏡の約1000倍も優れています。 リボソームや細胞膜の構造など、光学顕微鏡では見えない微細な構造を観察できます。
ただし、電子顕微鏡では生きた細胞を観察することはできません。 試料を真空中に置く必要があるため、生きた状態のまま観察するのは不可能です。 生きた細胞を見るには、光学顕微鏡を使います。
| 肉眼 | 光学顕微鏡 | 電子顕微鏡 | |
|---|---|---|---|
| 分解能 | 約 0.1 mm(100 μm) | 約 0.2 μm(200 nm) | 約 0.2 nm |
| 使う「光」 | 可視光 | 可視光 | 電子線 |
| 倍率 | ── | ~1500倍 | ~100万倍 |
| 生きた試料 | ○ | ○ | × |
| 見えるもの | 大きな細胞(卵など) | 細胞、核、葉緑体など | リボソーム、細胞膜の構造 |
光学顕微鏡で細胞の大きさを測定するには、接眼ミクロメーターと対物ミクロメーターを使います。対物ミクロメーターの1目盛りは10 μmと決まっています。まず両方のミクロメーターの目盛りが重なる箇所を見つけ、接眼ミクロメーター1目盛りの実際の長さを計算します。その後、対物ミクロメーターを外し、接眼ミクロメーターで試料の大きさを測定します。
光学顕微鏡の分解能が約0.2 μmで頭打ちになるのは、光の回折限界によるものです。可視光の波長は約400〜700 nmであり、波長の半分程度(約200 nm = 0.2 μm)より小さい構造は、光の回折現象によってぼやけてしまい、どんなにレンズを改良しても区別できません。
この限界を打ち破ったのが電子顕微鏡です。電子のド・ブロイ波長は加速電圧に依存しますが、100 kVで加速した電子の波長はわずか0.004 nm。光の波長の10万分の1以下です。だからこそ、電子顕微鏡は原子レベルの構造まで見ることができるのです。
近年では、光学顕微鏡でも回折限界を超える「超解像顕微鏡」が開発されています。2014年にノーベル化学賞を受賞した技術で、蛍光分子の特性を巧みに利用して分解能を数十nmまで向上させています。
「細胞」と一口に言っても、その大きさはさまざまです。 もっとも小さな細胞は直径0.2 μmほどの細菌。もっとも大きな細胞はダチョウの卵(直径約7〜8 cm)です。 大きさに実に10万倍以上の開きがあります。
| 細胞・構造 | 大きさの目安 | 見る方法 |
|---|---|---|
| ウイルス(参考:細胞ではない) | 20〜300 nm | 電子顕微鏡 |
| 大腸菌(原核細胞) | 約 1〜2 μm | 光学顕微鏡 |
| 赤血球 | 約 7〜8 μm | 光学顕微鏡 |
| ヒトの一般的な細胞 | 約 10〜30 μm | 光学顕微鏡 |
| ゾウリムシ(単細胞生物) | 約 170〜290 μm | 光学顕微鏡 |
| ニワトリの卵(卵黄部分) | 約 3 cm | 肉眼 |
| ダチョウの卵(卵黄部分) | 約 7〜8 cm | 肉眼 |
ここで注意したいのは、ウイルスは細胞ではないということです。 ウイルスは自力で代謝を行えず、他の細胞に寄生しなければ増殖できません。 そのため、ウイルスは「生物」に含めないのが一般的です。
地球上には数百万種以上の生物が存在し、それぞれの細胞の形や大きさは千差万別です。 しかし、どんなに多様に見えても、すべての細胞に共通する3つの構造があります。
細胞膜は、細胞の内側と外側を隔てる薄い膜です。リン脂質の二重層でできており、厚さはわずか7〜8 nmほど。細胞膜は単なる「壁」ではなく、必要な物質を選んで通す選択的透過性をもっています。いわば、招待客だけを通す門番がいる城壁のようなものです。
細胞質は、細胞膜の内側で核を除いた部分全体を指します。ゼリー状の細胞質基質(サイトゾル)と、その中に浮かぶさまざまな細胞小器官からなります。代謝の多くはこの細胞質の中で行われています。
すべての細胞はDNA(デオキシリボ核酸)をもっています。DNAは遺伝情報を担う分子で、タンパク質の設計図が書き込まれています。真核細胞ではDNAは核の中に収められていますが、原核細胞では核膜がないため、細胞質中にDNAが存在します。
細胞には大きく分けて2つのタイプがあります。 原核細胞と真核細胞です。 この2つの違いを一言でいえば、「核膜で包まれた核があるかどうか」です。
原核細胞は、核膜をもたない細胞です。 DNAは細胞質中にむき出しの状態で存在しており、核様体と呼ばれる領域にまとまっています。 ミトコンドリアや葉緑体などの膜で囲まれた細胞小器官ももちません。 たとえるなら、仕切りのない「ワンルームの部屋」のようなものです。
原核細胞からなる生物を原核生物といいます。 細菌(大腸菌、乳酸菌、シアノバクテリアなど)と古細菌(アーキア)が原核生物です。 原核細胞の大きさは一般に1〜5 μm程度で、真核細胞よりかなり小さいのが特徴です。
真核細胞は、核膜に囲まれた核をもつ細胞です。 DNAは核の中に整理されて収められています。 さらに、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体など、膜で囲まれたさまざまな細胞小器官をもっています。 たとえるなら、リビング、キッチン、寝室と「間取りのある家」のようなものです。
真核細胞からなる生物を真核生物といいます。 動物、植物、菌類(キノコ・カビ・酵母)、そして原生生物(アメーバ・ゾウリムシなど)がすべて真核生物です。
| 原核細胞 | 真核細胞 | |
|---|---|---|
| 核膜 | なし | あり |
| DNAの状態 | 核様体に存在 | 核の中に存在 |
| 膜で囲まれた細胞小器官 | なし | あり(ミトコンドリア等) |
| リボソーム | あり(70S) | あり(80S) |
| 細胞の大きさ | 1〜5 μm | 10〜100 μm |
| 例 | 大腸菌、シアノバクテリア | 動物、植物、菌類 |
原核細胞と真核細胞の構造の違いについては、次の記事(1-2)で詳しく学びます。
真核細胞はどのようにして誕生したのでしょうか。現在最も有力な仮説が、リン・マーギュリスが提唱した細胞内共生説です。
この説によると、約20億年前、大きな原核細胞が小さな好気性細菌を取り込みました。取り込まれた細菌は消化されずに細胞内で生き続け、やがてミトコンドリアへと進化しました。同様に、光合成細菌(シアノバクテリアの仲間)を取り込んだ系統は葉緑体を獲得しました。
この仮説を支持する証拠として、ミトコンドリアと葉緑体が独自のDNAと二重の膜をもっていることが挙げられます。外側の膜は取り込んだ宿主細胞に由来し、内側の膜は取り込まれた細菌自身の細胞膜に由来すると考えられています。この内容は第11章「進化のしくみ」で再び詳しく学びます。
生物は細胞の数によって、単細胞生物と多細胞生物に分けることができます。
単細胞生物は、体がたった1個の細胞だけでできている生物です。 1つの細胞の中で、栄養の取り込み、消化、呼吸、排泄、運動、そして生殖まで── 生命に必要なすべての機能をまかなっています。
代表的な単細胞生物には、大腸菌(原核生物)、酵母(真核・菌類)、アメーバ・ゾウリムシ(真核・原生生物)などがあります。
多細胞生物は、多数の細胞からなる生物です。 ヒトの体は約37兆個の細胞からできていると推定されています。
多細胞生物の特徴は、細胞の分化です。 すべての細胞が同じ仕事をしているのではなく、神経細胞は信号の伝達を、筋細胞は収縮を、赤血球は酸素の運搬を……と、それぞれが異なる役割に特化しています。
同じ機能をもつ細胞が集まったものを組織、複数の組織が組み合わさって特定のはたらきをするまとまりを器官、器官が協力して一つの機能を果たす仕組みを器官系といいます。
細胞 → 組織 → 器官 → 器官系 → 個体
単細胞でも十分に生きていけるのに、なぜ多細胞生物が進化したのでしょうか。いくつかの利点が考えられています。
第一に、体のサイズの大型化です。大きい体は捕食されにくく、環境の変動にも強くなります。第二に、分業による効率化です。1つの細胞が何もかもこなすより、それぞれの仕事に特化した細胞が協力するほうが、はるかに複雑で高度な機能を実現できます。
実は、単細胞生物から多細胞生物への進化は、生物の歴史の中で少なくとも25回以上、独立に起こったと推定されています。動物、植物、菌類はそれぞれ別々に多細胞化しており、多細胞化は生物進化の「必然的な方向性」の一つだったといえるかもしれません。
この記事では、「すべての生物は細胞からできている」という細胞説から出発し、 顕微鏡の世界、細胞の大きさ、基本構造、そして原核細胞と真核細胞の違いまでを学んできました。 最後に、全体を鳥の目で見渡してみましょう。
物理学の基本単位が「原子」であるように、生物学の基本単位は「細胞」です。 細胞は、生命活動を営むことのできる最小の単位であり、すべての生物は1個以上の細胞でできています。 この共通性こそ、バクテリアからヒトまでを同じ「生物学」という枠組みで理解できる根拠です。
原核細胞のシンプルな構造と真核細胞の精密な区画化は、それぞれの生物の生き方と深く結びついています。 細菌は小さく速く増殖する戦略を、真核生物は大きく複雑な体をつくる戦略をとっています。 「構造が機能を決める」──この原則は、これからの章でも繰り返し登場する生物学の基本テーマです。
この記事で学んだ「細胞」の知識は、生物学のあらゆるテーマへの入り口になります。以下に主要なつながりを整理しておきましょう。
このように、「細胞」は生物学のすべての分野につながる中心概念です。この記事で学んだことをしっかり頭に入れておけば、これから先どの章に進んでも、「細胞」に立ち返って理解を深めることができるはずです。
Q1. 細胞説の3つの柱を述べてください。
Q2. 光学顕微鏡と電子顕微鏡の分解能をそれぞれ答えてください。
Q3. 原核細胞と真核細胞の最大の違いは何ですか?
Q4. 次のうち原核生物はどれですか?──アメーバ、大腸菌、酵母、シアノバクテリア
Q5. 多細胞生物の体の階層構造を、小さい方から順に答えてください。
この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。
次の文中の空欄( ア )〜( カ )に入る適切な語句を答えよ。
1665年、イギリスの( ア )はコルクの薄片を顕微鏡で観察し、小さな区画を発見して「cell」と名付けた。 その後、1838年に( イ )が植物について、1839年に( ウ )が動物について、「すべての生物は細胞からなる」という( エ )を提唱した。 さらに1855年、( オ )は「すべての細胞は既存の( カ )から生じる」という原則を付け加えた。
ア:フック(ロバート・フック) イ:シュライデン ウ:シュワン エ:細胞説 オ:フィルヒョー カ:細胞
細胞説の成立過程に関する基本問題です。フックはコルクの死細胞を観察し「cell」と命名しました。約170年後、シュライデン(植物)とシュワン(動物)がそれぞれ細胞説を提唱し、フィルヒョーが「すべての細胞は細胞から生じる」という原則を加えて完成させました。年号の順序(1665→1838→1839→1855)も確認しておきましょう。
細胞に関する記述として誤っているものを、次の①〜⑤から1つ選べ。
③
③が誤りです。多くの細胞は光学顕微鏡で十分に観察できます。ヒトの一般的な細胞は10〜30 μm程度で、光学顕微鏡の分解能(約0.2 μm)を大きく上回っています。また、ニワトリの卵やダチョウの卵など、肉眼で見えるほど大きな細胞も存在します。
①は正しいです。フックが見たのはコルクの死細胞の細胞壁であり、生きた細胞の内容物は失われていました。
②は正しいです。レーウェンフックは自作の単レンズ顕微鏡で微生物を発見しました。
④は正しいです。DNAと細胞膜はすべての細胞に共通する構造です。
⑤は正しいです。多細胞生物では細胞が分化して分業しています。
ミクロメーターを用いた測定に関する次の問いに答えよ。
光学顕微鏡に接眼ミクロメーターを取り付け、対物ミクロメーターをステージにのせて400倍で観察したところ、 接眼ミクロメーターの20目盛りと対物ミクロメーターの5目盛りが一致した。 対物ミクロメーターの1目盛りは10 μmである。
(1) 接眼ミクロメーター1目盛りの長さは何 μm か。
(2) 対物ミクロメーターを外し、ある細胞を観察したところ、その長径は接眼ミクロメーターの12目盛り分であった。この細胞の長径は何 μm か。
(3) 対物レンズを換えて倍率を100倍にした場合、接眼ミクロメーター1目盛りの長さは何 μm になるか。
(1) 2.5 μm
(2) 30 μm
(3) 10 μm
(1) 対物ミクロメーターの5目盛り = 50 μm が、接眼ミクロメーターの20目盛りに相当します。
接眼ミクロメーター1目盛り = 50 μm ÷ 20 = 2.5 μm
(2) 接眼ミクロメーター1目盛りが2.5 μmなので、12目盛り分の長さは
2.5 μm × 12 = 30 μm
(3) 倍率を400倍から100倍に変えると、見かけの大きさが1/4になります。接眼ミクロメーターの目盛り自体の見かけの大きさは変わりませんが、対物ミクロメーターの目盛りは1/4の大きさに見えます。
したがって、接眼ミクロメーター1目盛りが実際に対応する長さは4倍になります。
2.5 μm × 4 = 10 μm
ポイント:対物ミクロメーター1目盛りの実際の長さ(10 μm)は倍率によって変わりませんが、接眼ミクロメーター1目盛りが対応する実際の長さは、倍率を上げると小さく、倍率を下げると大きくなります。
原核細胞と真核細胞に関する次の問いに答えよ。
(1) 原核細胞の特徴を、「核膜」「細胞小器官」の2語を用いて40字以内で説明せよ。
(2) 次の①〜⑥の生物のうち、原核生物をすべて選べ。
(3) 原核細胞と真核細胞に共通して存在する構造を3つ挙げよ。
(1) 核膜に囲まれた核をもたず、膜で囲まれた細胞小器官もない。(28字)
(2) ①・④・⑥
(3) DNA、細胞膜、リボソーム
(1) 原核細胞の最大の特徴は核膜をもたないことです。DNAは核様体と呼ばれる領域に存在します。また、ミトコンドリアや葉緑体などの膜で囲まれた細胞小器官ももちません。
(2) 大腸菌(①)は細菌、シアノバクテリア(④)は光合成を行う細菌、乳酸菌(⑥)は細菌であり、いずれも原核生物です。酵母(②)は菌類で真核生物、アメーバ(③)とゾウリムシ(⑤)は原生生物で真核生物です。特に酵母は「菌」という字がつくため細菌と混同されやすいですが、真核生物です。
(3) DNAと細胞膜はすべての細胞に存在します。また、タンパク質合成の場であるリボソームも、原核細胞(70S)と真核細胞(80S)の両方に存在します。大きさ(沈降係数)は異なりますが、基本的な機能は同じです。
次の文を読み、あとの問いに答えよ。
ある研究者が、種類の異なる6つの生物(A〜F)を観察し、以下の特徴を記録した。
| 生物 | 細胞の数 | 核膜 | 葉緑体 | 細胞壁 | 大きさ |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 多数 | あり | あり | あり | 個体全長 30 cm |
| B | 1個 | なし | なし | あり | 約 2 μm |
| C | 多数 | あり | なし | なし | 個体全長 50 cm |
| D | 1個 | あり | なし | なし | 約 200 μm |
| E | 1個 | なし | なし | あり | 約 3 μm |
| F | 多数 | あり | なし | あり | 個体全長 5 cm |
(1) 原核生物に該当するものをすべて選べ。
(2) 生物Aとして考えられる生物群を答えよ。
(3) 生物Dとして考えられる生物の具体例を1つ挙げよ。
(4) 生物Fとして考えられる生物群を答えよ。また、この生物群が細胞壁をもつことに着目して、植物との違いを1つ述べよ。
(5) 生物BとEは、ともに原核生物であるにもかかわらず、現在では異なるドメインに分類されることがある。このような分類が行われる根拠を、「rRNA」の語を用いて40字以内で述べよ。
(1) B、E
(2) 植物
(3) アメーバ(またはゾウリムシなど)
(4) 生物群:菌類(キノコ・カビなど)。植物との違い:葉緑体をもたないため光合成を行えず、外部の有機物を分解・吸収して栄養を得る(従属栄養)。
(5) rRNAの塩基配列を比較すると、細菌と古細菌の間には真核生物との差に匹敵する大きな違いがあるため。(46字)
(1) 核膜がないのはBとEです。核膜をもたない細胞は原核細胞であり、原核細胞からなる生物が原核生物です。
(2) 生物Aは、多細胞で、核膜あり、葉緑体あり、細胞壁ありという特徴をもちます。葉緑体をもつ多細胞の真核生物は植物です。
(3) 生物Dは、単細胞で、核膜あり、葉緑体なし、細胞壁なしです。真核の単細胞生物で細胞壁をもたないものは、アメーバやゾウリムシなどの原生生物が該当します。大きさが約200 μmであることからも、ゾウリムシ(170〜290 μm)が有力な候補です。
(4) 生物Fは、多細胞で、核膜あり、葉緑体なし、細胞壁ありです。葉緑体がない(=光合成をしない)が細胞壁をもつ多細胞の真核生物は菌類です。菌類の細胞壁の主成分はキチンであり、植物の細胞壁の主成分(セルロース)とは異なります。
(5) カール・ウーズは、すべての生物がもつrRNA(リボソームRNA)の塩基配列を比較する手法を開発しました。その結果、従来まとめて「原核生物」とされていた生物の中に、塩基配列が大きく異なる2つのグループ(細菌と古細菌)が存在することが判明しました。現在では、生物は細菌ドメイン・古細菌ドメイン・真核生物ドメインの3ドメインに分類されています。この分類は第12章「生物の系統」で詳しく学びます。