第8章 植物の環境応答

植物ホルモン
─ 成長を制御する化学物質

動物のように動けない植物は、どうやって環境の変化に対応しているのでしょうか。
その答えの中核にあるのが植物ホルモンです。植物体内で微量につくられ、細胞の成長・分化・老化まで幅広くコントロールする「化学物質の司令塔」のはたらきを見ていきましょう。

1植物ホルモンとは何か

植物ホルモンとは、植物体内でごく微量につくられ、特定の器官や細胞に運ばれて成長や生理反応を調節する低分子の化学物質です。 動物のホルモンと同じ「微量で大きな効果を発揮する」点が共通していますが、植物ホルモンは血管のような循環系をもたないため、細胞間を拡散や特定の輸送タンパク質によって移動するという特徴があります。

たとえるなら、植物ホルモンは「社内メール」のようなものです。社長(茎頂や根端)が発信した指示が各部署(細胞)に届き、受け取った部署が指示に応じた仕事(遺伝子発現の変化)を行う──この情報伝達のしくみが、動けない植物の体全体を協調させています。

植物ホルモンが細胞に届くと、その細胞の受容体に結合し、細胞内のシグナル伝達経路を活性化して遺伝子発現パターンを変化させます。これにより、特定のタンパク質が合成されたり活性が変わったりして、細胞の成長・分化が調節されます。

ポイント:植物ホルモンの基本的な特徴
  • 植物体内で微量につくられる低分子の化学物質
  • つくられた場所とは別の場所に運ばれて作用するものが多い
  • 植物の種類が異なっても共通のホルモンが同じ作用をもつ
  • 1つのホルモンが複数の作用をもち、複数のホルモンが協調・拮抗して働く

2オーキシン ─ 植物ホルモン研究の出発点

最初に発見された植物ホルモンがオーキシンです。天然のオーキシンの化学名はインドール酢酸(IAA)です。おもに茎の先端部(茎頂分裂組織)でつくられ、基部方向に移動して細胞の伸長成長を促進します。

オーキシンの作用機構(酸成長説)

オーキシンが細胞に作用するしくみは酸成長説として知られています。

  1. オーキシンが細胞の受容体に結合する
  2. 細胞膜のプロトンポンプ(H+ポンプ)が活性化し、H+が細胞壁へ放出される
  3. 細胞壁が酸性になると、セルロース繊維どうしを結びつけている多糖類の結合がゆるむ
  4. 細胞壁がやわらかくなり、浸透圧差による吸水で細胞が伸長する

オーキシンの極性移動

オーキシンは植物体内を先端部から基部方向にのみ移動します(逆方向には移動しません)。この一方向の輸送を極性移動といいます。

極性移動のしくみには、細胞膜上の2種類のタンパク質が関わります。

  • AUXタンパク質(取り込み輸送体):細胞の上面(先端側)や側面に局在し、オーキシンを細胞内に取り込む
  • PINタンパク質(排出輸送体):細胞の基部側の細胞膜に集中して存在し、オーキシンを細胞外へ排出する

PINタンパク質が基部側にだけ局在しているため、オーキシンは常に先端から基部へ向かう一方通行の流れをつくります。

オーキシンの多様なはたらき

オーキシンは伸長成長の促進以外にも、多くのはたらきをもっています。

  • 光屈性・重力屈性に関与(→8-2で詳しく学習)
  • 頂芽優勢の維持
  • 果実の成長促進(イチゴの花床の発達など)
  • 離層形成の抑制(落葉・落果を防ぐ)
オーキシンは「先端→基部」にしか移動しないのか
オーキシンを排出するPINタンパク質が、細胞の基部側の膜にだけ局在している
オーキシンは各細胞の基部側からのみ排出される
結果として、細胞のリレーにより先端→基部方向への一方通行が成立する
この極性移動により、茎頂でつくられたオーキシンが下方の伸長領域に正確に届く
発展:オーキシン濃度と成長の関係 生物

オーキシンの成長促進効果は器官によって最適濃度が異なります。茎は比較的高濃度で成長が促進されますが、根は低濃度で促進され、高濃度では逆に成長が抑制されます。この「最適濃度の違い」が、重力屈性で茎が上に伸び根が下に伸びるしくみの鍵になります(茎の最適濃度 > 根の最適濃度)。

3ジベレリン ─ 伸長と発芽の促進

ジベレリンは、茎の伸長成長の促進と種子の発芽促進に関わる植物ホルモンです。イネの「ばか苗病」(異常に背が伸びる病気)の原因菌であるジベレラ菌から発見されました。

ジベレリンの主なはたらき

  • 茎の伸長成長の促進:セルロース繊維を横方向に配列させることで、細胞を縦方向に伸長させる
  • 種子の発芽促進(休眠の打破):アブシシン酸による発芽抑制を解除する
  • 種なしブドウの作出:受粉なしに子房の発達を促進する(単為結果の誘導)

オオムギの発芽とジベレリン

ジベレリンのはたらきが最もよくわかる例が、オオムギの種子の発芽です。

  1. 水分・温度などの条件が整うと、でジベレリンが合成される
  2. ジベレリンが糊粉層の細胞に作用し、アミラーゼ遺伝子の発現を誘導する
  3. 合成されたアミラーゼが胚乳のデンプンを分解し、糖が生じる
  4. 生じた糖が胚の成長に使われ、発芽が進む
ポイント:オオムギの発芽のしくみ

発芽のしくみは「胚がジベレリンを出す → 糊粉層がアミラーゼをつくる → 胚乳のデンプンが分解 → 胚が成長」という流れで整理しましょう。ジベレリンは「遺伝子発現を誘導する」ことでアミラーゼを合成させる点がポイントです。

4その他の主要な植物ホルモン

アブシシン酸 ─ 「ブレーキ役」のホルモン

アブシシン酸は、成長を抑制し、ストレスに備える方向にはたらく植物ホルモンです。ジベレリンと拮抗する場面が多いことから、植物の「アクセルとブレーキ」にたとえられます。

  • 種子の休眠の維持:胚の成長を停止させ、乾燥耐性を獲得させる
  • 気孔の閉鎖:乾燥ストレス時に葉で合成され、孔辺細胞に作用してK+を流出させ、膨圧が低下することで気孔を閉じる

エチレン ─ 気体の植物ホルモン

エチレンは、唯一の気体状の植物ホルモンです。気体であるため、自然状態で他の個体にも作用できるという特徴があります。

  • 果実の成熟促進:成熟したリンゴから放出されるエチレンが、未成熟のリンゴの成熟を早める
  • 茎の肥大成長促進:セルロース繊維を縦方向に配列させることで、細胞を横方向に膨らませる(ジベレリンと逆)
  • 落葉・落果の促進:離層の形成を促進する

サイトカイニン ─ 細胞分裂の促進

サイトカイニンは、おもに根の先端でつくられ、細胞分裂を促進する植物ホルモンです。

  • 細胞分裂の促進
  • 側芽の成長促進:頂芽優勢において、オーキシンと拮抗的に働く
  • 老化の抑制
発展:ブラシノステロイドとジャスモン酸 生物

ブラシノステロイドはオーキシンとは異なるしくみで茎の伸長成長を促進するステロイド系の植物ホルモンです。変異体では著しい矮性(わいせい)を示します。ジャスモン酸は昆虫の食害や病原菌の感染時に合成され、防御遺伝子の発現を誘導する「防御ホルモン」です。

5頂芽優勢 ─ ホルモンの協調と拮抗

植物の茎で頂芽が成長しているとき、側芽の成長が抑制される現象を頂芽優勢といいます。 庭木の剪定で先端を切ると枝分かれが増えるのは、この頂芽優勢が解除されるためです。

頂芽優勢のしくみには、オーキシンサイトカイニンの2つの植物ホルモンが関わります。

  • 頂芽で合成されたオーキシンが基部方向に移動し、側芽付近でサイトカイニンの合成を抑制する
  • サイトカイニンは側芽の成長を促進するホルモンなので、その合成が抑えられると側芽が伸びない
  • 頂芽を切り取ると、オーキシンの供給が止まり、サイトカイニンの合成抑制が解除されて側芽が成長する
ポイント:頂芽優勢のしくみ
  • 頂芽あり → オーキシンが下降 → サイトカイニン合成を抑制 → 側芽は成長しない
  • 頂芽を切除 → オーキシン供給なし → サイトカイニンが合成される → 側芽が成長する
  • 頂芽を切除後、切断面にオーキシンを与える → 頂芽優勢が維持される(側芽は成長しない)

6植物ホルモンの一覧と相互作用

ここまで学んだ植物ホルモンを表にまとめます。入試では「どのホルモンがどの現象に関わるか」を正確に答える問題が頻出です。

植物ホルモンおもな合成場所主なはたらき
オーキシン
(インドール酢酸)
茎頂・幼葉鞘の先端部細胞の伸長成長促進、光屈性・重力屈性、頂芽優勢の維持、果実の成長促進、離層形成の抑制
ジベレリン茎頂・若い葉・種子の胚茎の伸長成長促進、種子の発芽促進(休眠打破)、単為結果の誘導
サイトカイニン根の先端細胞分裂の促進、側芽の成長促進、老化の抑制
アブシシン酸葉・根・種子種子の休眠維持、気孔の閉鎖、ストレス応答
エチレン成熟中の果実・茎の節果実の成熟促進、茎の肥大成長促進、落葉・落果の促進
発展:植物ホルモンの相互作用の覚え方 生物

植物ホルモンは単独で作用するのではなく、協調拮抗のネットワークとして機能します。代表的な関係を整理しておきましょう。

  • 拮抗:ジベレリン vs アブシシン酸(発芽の促進 vs 抑制)
  • 拮抗:オーキシン vs サイトカイニン(側芽の成長抑制 vs 促進)
  • 拮抗:ジベレリン vs エチレン(縦方向の伸長 vs 横方向の肥大)
  • 拮抗:オーキシン vs エチレン(離層形成の抑制 vs 促進)

7傾性・膨圧運動・重力屈性のしくみ

屈性と傾性の違い

植物が刺激の方向に依存して屈曲する運動を屈性といいます(光屈性・重力屈性など)。これに対し、刺激の方向に関係なく、刺激の有無強弱によって起こる運動を傾性といいます。

  • 光傾性:チューリップの花が気温の上昇(光による温度変化)に応じて開閉する
  • 温度傾性:温度変化によって花弁の内側と外側の成長速度が変わり、開閉が起こる

屈性は「刺激がどの方向から来たか」に応じて屈曲する方向が決まる点で、傾性と区別されます。

膨圧運動 ─ オジギソウの例

オジギソウ(ミモザ)の葉に触れると、すばやく葉が閉じて下垂します。この運動は成長によるものではなく、葉柄の付け根にある葉枕(ようちん)の細胞の膨圧が急激に変化することで起こります。

刺激を受けると、葉枕の細胞からカリウムイオン(K+)と水が流出して膨圧が低下し、葉が閉じます。この反応は成長を伴わない可逆的な運動であり、時間が経つと元に戻ります。

重力屈性のしくみ ─ アミロプラストの沈降

根が下に向かって伸びる正の重力屈性のしくみには、根冠の細胞に含まれるアミロプラスト(デンプンを含む色素体)が関わっています。

  1. 植物体を横にすると、根冠の細胞内でアミロプラスト(デンプン粒)が重力の方向に沈降する
  2. 沈降したアミロプラストが細胞内のシグナルを変化させ、オーキシンの分布が変わる
  3. 根の下側(重力側)にオーキシンが多く移動する
  4. 根ではオーキシン濃度が高いと伸長が抑制されるため、下側の伸長が抑えられる
  5. 上側のほうが伸長するので、根は下向きに屈曲する

茎の場合は、下側に多く集まったオーキシンが伸長を促進するため、下側がより伸びて茎は上向きに屈曲します(負の重力屈性)。このように、茎と根で屈曲の方向が逆になるのは、オーキシンに対する最適濃度の違いによります。

8この章を俯瞰する ─ 植物の環境応答は「ホルモン」と「受容体」の連携

植物は動けないからこそ、環境変化を感知する「受容体」と、体内の応答を調節する「植物ホルモン」の精密な連携によって環境に適応しています。この節で学んだ植物ホルモンは、次節以降で学ぶ光応答や花芽形成でも中心的な役割を果たします。

この章と他の章のつながり

他の章へのつながりマップ

  • 光受容体と光応答 → 8-2:フォトトロピンが受容した光情報が、オーキシンの分布を変えて光屈性を引き起こす。
  • 花芽形成 → 8-3:フロリゲンやジベレリンが花芽の形成を誘導する。
  • 遺伝子発現調節 → 6-5:ジベレリンがアミラーゼ遺伝子の転写を誘導するのは、選択的遺伝子発現の好例。
  • 細胞間の情報伝達 → 4-7:植物ホルモンも受容体を介したシグナル伝達のしくみで作用する。

9まとめ

  • 植物ホルモン:植物体内で微量につくられ、成長や生理反応を調節する低分子の化学物質
  • オーキシン(インドール酢酸):茎頂でつくられ、極性移動する。細胞の伸長成長促進、光屈性・重力屈性、頂芽優勢の維持
  • 酸成長説:オーキシンがH+ポンプを活性化 → 細胞壁が酸性化 → セルロース繊維の結合がゆるむ → 吸水で伸長
  • 極性移動:PINタンパク質が基部側に局在するため、オーキシンは先端→基部の一方向にのみ移動する
  • ジベレリン:茎の伸長成長促進、種子の発芽促進(アミラーゼ遺伝子の発現誘導)、種なしブドウの作出
  • アブシシン酸:種子の休眠維持、気孔の閉鎖。ジベレリンと拮抗する
  • エチレン:唯一の気体ホルモン。果実の成熟促進、茎の肥大成長促進、落葉・落果の促進
  • サイトカイニン:細胞分裂の促進、側芽の成長促進。オーキシンと拮抗して頂芽優勢に関与
  • 頂芽優勢:頂芽のオーキシンが側芽付近のサイトカイニン合成を抑制し、側芽の成長を抑える現象
  • 屈性:刺激の方向に応じた屈曲。傾性:刺激の有無・強弱による運動(方向に依存しない)
  • 膨圧運動:オジギソウの葉枕の細胞の膨圧変化による可逆的な運動(成長を伴わない)
  • 重力屈性:根冠のアミロプラスト(デンプン粒)が重力方向に沈降 → オーキシン分布が変化。根では下側の伸長抑制で下向きに、茎では下側の伸長促進で上向きに屈曲

10確認テスト

この節で学んだ基本事項を確認しましょう。

Q1

植物ホルモンとはどのような物質か。「微量」「成長」「調節」の語を用いて説明せよ。

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解答

植物体内で微量につくられ、特定の細胞や器官に作用して、成長や生理反応を調節する低分子の化学物質。

Q2

オーキシンの極性移動のしくみを、「PINタンパク質」「基部側」の語を用いて説明せよ。

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解答

オーキシンの排出輸送体であるPINタンパク質が細胞の基部側の膜に局在しているため、オーキシンは各細胞の基部側からのみ排出され、先端から基部への一方向にのみ移動する。

Q3

オオムギの発芽においてジベレリンが果たす役割を、「糊粉層」「アミラーゼ」の語を用いて述べよ。

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解答

胚で合成されたジベレリンが糊粉層の細胞に作用し、アミラーゼ遺伝子の発現を誘導する。合成されたアミラーゼが胚乳のデンプンを分解し、生じた糖が胚の成長に使われる。

Q4

頂芽優勢のしくみを、「オーキシン」「サイトカイニン」「側芽」の語を用いて説明せよ。

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解答

頂芽で合成されたオーキシンが基部方向に移動し、側芽付近でサイトカイニンの合成を抑制することで、側芽の成長が抑えられる。頂芽を切除するとオーキシンの供給が止まり、サイトカイニンが合成されて側芽が成長する。

Q5

エチレンが「気体状の植物ホルモン」であることの生物学的な意義を述べよ。

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解答

気体であるため、輸送体を介さずに拡散でき、他の個体にも自然状態で作用できる。成熟した果実から放出されたエチレンが周囲の未成熟果実の成熟を促進するなど、個体間の情報伝達を可能にしている。

11入試問題演習

この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

8-1-1A 基礎知識穴埋め

次の文中の空欄( ア )〜( カ )に入る適切な語句を答えよ。

植物ホルモンの一種である( ア )は、おもに茎の先端部で合成され、先端部から基部方向へのみ移動する。この移動を( イ )という。( イ )には、排出輸送体である( ウ )タンパク質が細胞の基部側に局在することが関与している。

種子の発芽においては、胚で合成された( エ )が糊粉層に作用して( オ )遺伝子の発現を誘導する。一方、( カ )は種子の休眠を維持するはたらきをもつ。

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解答

ア:オーキシン イ:極性移動 ウ:PIN エ:ジベレリン オ:アミラーゼ カ:アブシシン酸

解説

オーキシンの極性移動とジベレリンによる発芽促進は、植物ホルモンの最重要テーマです。PINタンパク質は「排出」、AUXタンパク質は「取り込み」と区別しましょう。ジベレリンとアブシシン酸は発芽に対して拮抗的に働きます。

8-1-2A 基礎知識選択

次の1〜10の現象のそれぞれに対応する植物ホルモンを、下のA〜Dから選べ。

1. 茎の伸長成長を促進する。
2. 種子の休眠を維持する。
3. 頂芽で合成され、側芽の成長を抑制する。
4. 種なしブドウの作出に利用される。
5. 果実の成熟を促進する。
6. 落葉・落果を促進する。
7. 気孔を閉じさせる。
8. 細胞の肥大成長を促進する。
9. 光屈性に関与する。
10. 種子の発芽を促進する。

A:オーキシン B:エチレン C:ジベレリン D:アブシシン酸

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解答

1:A, C 2:D 3:A 4:C 5:B 6:B 7:D 8:B 9:A 10:C

解説

1はオーキシンもジベレリンも促進します(作用機構は異なる)。3の頂芽優勢ではオーキシンが側芽の成長を抑え、サイトカイニンが促進しますが、選択肢にはサイトカイニンがないのでAのみ。4の種なしブドウはジベレリンの代表的な応用例です。8のエチレンは「肥大」成長(横方向への膨張)を促進し、ジベレリンの「伸長」成長(縦方向)と対比される点に注意しましょう。

B 標準レベル

8-1-3B 標準論述実験考察

オオムギの種子を用いて、次の実験を行った。

【実験】オオムギの種子から胚を取り除き、糊粉層を含む半粒を培地上に置いた。この半粒にジベレリン溶液を与えたものと与えなかったものを用意し、一定時間後に培地中のアミラーゼ活性を測定した。

(1) ジベレリン溶液を与えた場合と与えなかった場合で、アミラーゼ活性にどのような違いが見られるか予想せよ。

(2) この実験で、種子から胚を取り除いた理由を50字以内で説明せよ。

(3) この実験結果から、オオムギの発芽において胚が果たす役割を推定し、40字以内で述べよ。

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解答

(1) ジベレリンを与えた場合はアミラーゼ活性が高くなり、与えなかった場合はアミラーゼ活性がほとんど見られない。

(2) 胚自身がジベレリンを合成するので、その影響を排除して外から加えたジベレリンの効果だけを調べるため。(48字)

(3) 胚はジベレリンを合成して糊粉層のアミラーゼ合成を誘導する役割を果たす。(36字)

解説

(1) ジベレリンは糊粉層に作用してアミラーゼ遺伝子の発現を誘導するため、ジベレリンを加えるとアミラーゼが合成されます。

(2) 胚をそのままにすると、胚自身がジベレリンを合成してしまうため、外から加えたジベレリンの効果だけを見ることができません。

(3) この実験から、通常の発芽では胚がジベレリンの供給源であることがわかります。

採点ポイント((2)の論述・6点満点の場合)
  • 胚がジベレリンを合成することに言及(3点)
  • 胚由来のジベレリンの影響を排除する目的に言及(3点)

C 発展レベル

8-1-4C 発展論述実験考察

シロイヌナズナにおいて、光受容体A、光受容体B、光受容体Cをコードする3種類の遺伝子にそれぞれ変異が生じた変異体A、B、Cが得られた。以下の実験結果をもとに、各問いに答えよ。ただし、各変異体のゲノムに含まれるほかの遺伝子には変異がないものとする。

【実験1】白色光下でそれぞれの種子をまいた結果、変異体Cの発芽率は低かったが、それ以外の変異体および野生株はほぼ100%の発芽率を示した。変異体C以外の種子の中では、野生株と同様に植物ホルモンXの量が増加しており、植物ホルモンXを外から与えると、変異体Cを含むすべての植物体が暗室下でも発芽した。

【実験2】発芽した幼植物体に横から光を照射すると、変異体B以外は光照射方向に向かって成長したが、変異体Bでは光の方向に成長することはなかった。また、このとき植物ホルモンYの作用を阻害すると、すべての植物で光の方向への成長が抑制された。

(1) 植物ホルモンXの名称と、光受容体Cの名称を答えよ。

(2) 植物ホルモンXと拮抗して種子発芽を抑制する植物ホルモンの名称を答えよ。また、その植物ホルモンの種子発芽の抑制以外の生理作用を1つ述べよ。

(3) 植物ホルモンYの名称と、光受容体Bの名称を答えよ。

(4) 植物が光に向かって成長するしくみを、「光受容体B」「植物ホルモンY」「陰側」の語を用いて100字以内で述べよ。

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解答

(1) 植物ホルモンX:ジベレリン 光受容体C:フィトクロム

(2) アブシシン酸。生理作用の例:気孔の閉鎖(乾燥ストレス時に孔辺細胞に作用して気孔を閉じる)

(3) 植物ホルモンY:オーキシン 光受容体B:フォトトロピン

(4) 茎の先端部で光受容体Bが青色光を受容すると、植物ホルモンYの排出輸送体の分布が変化し、植物ホルモンYが陰側に多く移動する。陰側の細胞の伸長が促進されるため、光の方向に屈曲する。(85字)

解説

(1) 光受容体Cは光を受容して発芽を促進する受容体なので、赤色光を受容するフィトクロムです。フィトクロムが活性化するとジベレリンの合成が誘導され、発芽が促進されます。

(2) アブシシン酸はジベレリンと拮抗して種子の休眠を維持します。代表的な作用として気孔の閉鎖があります。

(3) 光屈性にかかわる光受容体は青色光受容体のフォトトロピン、関与する植物ホルモンはオーキシンです。

(4) 論述問題では、光受容体による光の受容→オーキシンの再分配→陰側の伸長促進→屈曲、という流れを順序立てて書くことが重要です。

採点ポイント((4)の論述・8点満点の場合)
  • 光受容体Bによる光の受容に言及(2点)
  • 植物ホルモンYが陰側に多く分布することに言及(3点)
  • 陰側の細胞の伸長成長が促進されることに言及(2点)
  • 光の方向への屈曲に言及(1点)