自然界では、異なる種の生物が「食う-食われる」「助け合い」「争い」など、さまざまな関係を結んで共存しています。
ライオンとシマウマ、アリとアブラムシ、イワナとヤマメ――これらの関係はどのようなルールで成り立っているのでしょうか。
異なる種の間に見られる相互作用のパターンを整理しましょう。
異なる種の生物が、同じ食物・空間・光などの資源をめぐって競い合うことを種間競争といいます。種間競争は、利用する資源の重なりが大きいほど激しくなります。
種間競争の結果、一方の種がその場所から排除されてしまう現象を競争的排除(ガウゼの法則)といいます。
ガウゼの実験では、ヒメゾウリムシとゾウリムシを同じ容器で飼育すると、ヒメゾウリムシが増加する一方でゾウリムシは著しく減少しました。両種は同じ餌(浮遊細菌)をめぐって競争し、ヒメゾウリムシの方が資源獲得能力で上回ったためです。
一方、ゾウリムシとミドリゾウリムシの場合は、ゾウリムシが培養液中の浮遊細菌を、ミドリゾウリムシが底層の酵母を食べる傾向があり、資源の重なりが小さかったため共存できました。
このように、近縁の種が生活空間や利用資源を分けることで競争を回避して共存する現象をすみわけといいます。
たとえば日本の渓流では、イワナは上流の冷水域に、ヤマメは中流域にすみわけています。一方の種だけを生息させると、本来の分布域を超えて分布を広げることが知られており、すみわけが種間競争の結果であることがわかります。
すみわけが「生息場所」を分けて共存するのに対し、同じ場所に生活しながら利用する食物の種類を分けることで競争を回避して共存する現象を食いわけといいます。たとえば、同じ海域で漁をするヒメウとカワウでは、ヒメウが主に表層の小魚を、カワウが底層付近の魚やエビを捕食することで共存しています。すみわけと食いわけは、いずれもニッチの重なりを小さくすることで種間競争を緩和する適応です。
異なる地域(大陸)で、系統的には近縁でないにもかかわらず、同様のニッチを占めている種どうしを生態的同位種といいます。たとえば、北米のピューマとアフリカのライオンは系統が異なりますが、いずれも大型の肉食獣として草原の頂点捕食者というニッチを占めています。生態的同位種の存在は、類似した環境では類似したニッチが生じ、そこに適応した種が独立に進化すること(収束進化)を示しています。
異なる種の間に見られる最も基本的な関係が「食う-食われる」の関係です。食う側を捕食者、食われる側を被食者といいます。
捕食者と被食者が共存する場合、両者の個体数は一定のタイムラグ(時間差)をもって周期的に変動することがあります。この変動パターンは次のように理解できます。
コウノシロハダニ(被食者)とカブリダニの一種(捕食者)を飼育容器で共存させた実験では、このような周期的変動が実際に観察されています。
数学者ロトカと数学者ヴォルテラは、捕食者-被食者の個体数変動を連立微分方程式で表しました。被食者をx、捕食者をyとすると、被食者は「自然増加 - 捕食による減少」で、捕食者は「被食者の捕食による増加 - 自然死亡」で個体数が変動します。このモデルから導かれる周期的変動は、実際の生態系でも広く観察されます。ただし現実の生態系では、環境の不均一性や避難場所の存在が変動パターンに影響を与えます。
異なる種の生物が密接なつながりをもって生活することを共生といいます。共生にはいくつかのタイプがあります。
双方の生物が互いに利益を得る関係を相利共生といいます。
一方の生物だけが利益を受け、他方は利益も不利益も受けない関係を片利共生といいます。
| 関係 | 種A | 種B | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 相利共生 | 利益 (+) | 利益 (+) | アリとアブラムシ |
| 片利共生 | 利益 (+) | 影響なし (0) | コバンザメとサメ |
| 捕食 | 利益 (+) | 不利益 (-) | ライオンとシマウマ |
| 寄生 | 利益 (+) | 不利益 (-) | コマユバチとガの幼虫 |
| 種間競争 | 不利益 (-) | 不利益 (-) | ゾウリムシとヒメゾウリムシ |
| 中立 | 影響なし (0) | 影響なし (0) | 同じ森林に生息するが関わりがない2種 |
ある生物が他の特定の生物から栄養分を一方的に奪い、その生物に不利益を与える関係を寄生といいます。利益を得る側を寄生者、不利益を受ける側を宿主(しゅくしゅ)といいます。
たとえばコマユバチは、ガやチョウの幼虫のからだに卵を産みつけます。ふ化したコマユバチの幼虫は宿主の体を食べて成長し、宿主は最終的に死亡します。
寄生者と宿主の関係は、捕食者と被食者の関係と共通する面があります。アズキゾウムシとその寄生バチの個体数は、捕食-被食関係と同様に、一定のタイムラグをもって周期的に変動することが確認されています。
捕食・共生・競争などの2種間の直接的な相互作用が、第3の種を介して間接的に別の種に影響を与えることを間接効果といいます。たとえば、ナナホシテントウがアブラムシを捕食することで、アブラムシとヨモギハムシとの種間競争が緩和され、ヨモギハムシの個体数が増加することがあります。これは捕食者が被食者の競争相手に間接的に利益をもたらす例です。
ある微生物が生産する化学物質が、他の微生物の生育を阻害する現象があります。抗生物質はこの現象を応用したもので、アオカビの一種が生産するペニシリンは、細菌の細胞壁の合成を阻害して細菌を殺します。抗生物質を生産する側の微生物は、自分の周囲の競争相手を排除することで生存に有利になります。
植物が根や葉などから放出する化学物質が、周囲の他の植物の発芽や生長を抑制する現象を他感作用(アレロパシー)といいます。たとえば、セイタカアワダチソウは根からcis-デヒドロマトリカリアエステルなどの化学物質を分泌し、周囲の植物の生長を抑えることが知られています。これは種間競争の一形態ともいえますが、直接的な資源の奪い合いではなく、化学物質による間接的な影響である点が特徴的です。
ある種の動物が他の種の形態や模様に似ている現象を擬態といいます。擬態は捕食-被食関係の中で進化した適応と考えられています。
毒や刺などの防御手段をもたない種が、毒をもつ種(モデル)に外見を似せることで捕食者から身を守る擬態をベイツ型擬態といいます。
たとえば、無毒のジロオビアゲハは、有毒のベニモンアゲハに翅の模様が似ています。捕食者は過去にベニモンアゲハを食べて不快な経験をしたため、似た模様のジロオビアゲハも避けるようになります。
毒や防御手段をもつ複数の種が互いに似た外見(警告色)をもつ現象をミューラー型擬態といいます。
たとえば、スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチなど、刺す能力をもつハチの仲間の多くは黒と黄の縞模様をもっています。これらが互いに似ていることで、捕食者は少ない学習回数で「黄色と黒の縞 = 危険」と覚え、すべての種が捕食を免れやすくなります。
種間競争・捕食-被食関係・共生・寄生・擬態――これらの種間関係は、それぞれ独立して存在するのではなく、互いに影響し合いながら生態系を形づくっています。捕食者の存在が競争的排除を防いで多様な種の共存を可能にしたり、共生関係が両種の分布と個体数に影響を与えたりします。
この節で学んだ基本事項を確認しましょう。
「競争的排除」とは何か。具体例を挙げて述べよ。
種間競争の結果、一方の種がその場所から排除されてしまう現象。たとえば、ヒメゾウリムシとゾウリムシを同じ容器で飼育すると、同じ餌をめぐる競争でヒメゾウリムシが優位となり、ゾウリムシが著しく減少する。
相利共生と片利共生の違いを、それぞれ具体例を挙げて説明せよ。
相利共生は双方が利益を得る関係で、アリとアブラムシ(アリは甘い排泄物を得て、アブラムシは天敵から守られる)が例。片利共生は一方のみが利益を得る関係で、コバンザメとサメ(コバンザメは移動・保護の利益を得るが、サメには影響がない)が例。
ベイツ型擬態とミューラー型擬態の違いを述べよ。
ベイツ型擬態は無毒の種が有毒の種に外見を似せる擬態で、似せる側だけが利益を得る。ミューラー型擬態は有毒の種どうしが互いに似た外見(警告色)をもつ擬態で、すべての種が捕食を免れやすくなる利益を得る。
捕食者-被食者関係において、両者の個体数が周期的に変動するしくみを述べよ。
被食者が増えると食物が豊富になり捕食者も遅れて増加する。捕食者の増加で被食者が減少すると、食物不足で捕食者も遅れて減少する。捕食者が減ると捕食圧が低下して被食者が再び増加し、この変動が繰り返される。
この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
次の文中の空欄( ア )〜( カ )に入る適切な語句を答えよ。
異なる種の間で共通の資源をめぐって起こる競争を( ア )という。( ア )の結果、一方の種が排除される現象を( イ )という。異なる種どうしが生活空間や利用資源を分けて共存することを( ウ )という。異種の生物が密接なつながりをもって生活することを( エ )といい、双方が利益を得る場合を( オ )、一方のみが利益を得る場合を( カ )という。
ア:種間競争 イ:競争的排除 ウ:すみわけ エ:共生 オ:相利共生 カ:片利共生
種間関係の基本用語を整理する問題です。種間競争は同じ資源(ニッチが重なる場合)に起こり、競争的排除はガウゼのゾウリムシの実験で示されました。すみわけは競争を回避する適応です。
ガウゼは、ゾウリムシ類を用いた以下の実験を行った。
実験1:ヒメゾウリムシとゾウリムシを同じ容器で飼育 → ゾウリムシが著しく減少
実験2:ゾウリムシとミドリゾウリムシを同じ容器で飼育 → 両種が共存
(1) 実験1でゾウリムシが減少した原因を「ニッチ」の語を用いて40字以内で述べよ。
(2) 実験2で2種が共存できた理由を、両種の餌の違いに触れて50字以内で述べよ。
(1) 両種のニッチが重なり、共通の餌をめぐる種間競争でヒメゾウリムシが優位だったため。(39字)
(2) ゾウリムシは浮遊細菌を、ミドリゾウリムシは底層の酵母を食べ、ニッチの重なりが小さく競争が弱かったため。(50字)
(1) ヒメゾウリムシとゾウリムシは同じ浮遊細菌を食べるため、ニッチが大きく重なり、競争的排除が起こりました。
(2) 利用する餌が異なることでニッチの重なりが小さくなり、競争の程度が弱まったため共存できました。
ある海岸の岩場にフジツボ A種とフジツボ B種が生息している。A種は潮間帯の上部から下部まで広く分布し、B種は潮間帯の下部のみに分布している。B種を実験的に除去すると、A種の分布は変わらなかった。一方、A種を除去すると、B種は潮間帯の上部まで分布を広げた。
(1) B種の潮間帯上部への分布を制限している要因は何か。具体的に述べよ。
(2) A種が潮間帯下部に生息できるにもかかわらず、B種を除去しても分布が変わらなかった理由を50字以内で述べよ。
(3) この実験結果は、ニッチの概念とどのように関係するか。「基本ニッチ」「実現ニッチ」の語を用いて70字以内で述べよ。
(1) A種との種間競争により、B種は潮間帯上部から排除されている。
(2) A種はもともと潮間帯全域に生息可能であり、B種の有無にかかわらず分布域は変わらないため。(43字)
(3) B種の基本ニッチは潮間帯全域だが、A種との種間競争によって実現ニッチが潮間帯下部のみに縮小している。(49字)
この実験はコネルのフジツボの実験として有名です。基本ニッチとは種間関係がない場合に利用可能な資源の範囲、実現ニッチとは種間競争などによって実際に利用している資源の範囲です。B種は潮間帯全域で生息可能(基本ニッチ)ですが、A種との競争で下部に限定されています(実現ニッチ)。