植物の葉が緑色なのは、光合成色素のクロロフィルが緑色の光を反射するからです。
では、吸収した光のエネルギーはどうなるのでしょうか。
チラコイド膜の上で繰り広げられる、光から化学エネルギーへの変換劇を見ていきましょう。
光合成は、光エネルギーを使ってCO2とH2Oから有機物(グルコースなど)を合成する反応です。 全体の反応式は次のとおりです。
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6O2 + 6H2O
光合成は大きく2つの段階に分かれます。
| 段階 | 反応の場 | 使うもの | つくるもの |
|---|---|---|---|
| ①光化学反応 | チラコイド膜 | 光エネルギー、H2O | ATP、NADPH、O2 |
| ②カルビン回路 | ストロマ | ATP、NADPH、CO2 | 有機物(G3P→グルコース) |
この記事では第1段階(光化学反応)を、次の記事(5-6)で第2段階(カルビン回路)を学びます。
葉緑体のチラコイド膜には、光合成色素が埋め込まれています。 おもな光合成色素は以下のとおりです。
これらの色素は青色と赤色の光をよく吸収しますが、緑色の光はほとんど吸収せずに反射します。 葉が緑色に見えるのは、緑色の光が反射されて私たちの目に届くからです。
チラコイド膜には、光化学系IIと光化学系Iという2つのタンパク質複合体が存在します。 光合成色素が吸収した光エネルギーは、これらの光化学系に集められます。
光合成のチラコイド膜と呼吸のミトコンドリア内膜では、どちらも電子伝達 → H⁺濃度勾配 → ATP合成酵素によるATP合成という共通のしくみが使われています。違いは、電子の供給源(光合成=水、呼吸=NADH/FADH₂)と電子の最終受容体(光合成=NADP⁺、呼吸=O₂)です。この共通原理を整理すると、呼吸と光合成の理解が深まり、混同を防げます。
この節で学んだ基本事項を確認しましょう。
光合成の2つの段階と、それぞれの反応の場を答えよ。
①光化学反応(チラコイド膜)、②カルビン回路(ストロマ)。
光合成で酸素が発生する理由を「水の分解」の語を用いて述べよ。
光化学系IIで電子が放出されると、その電子を補うために水が分解される。水の分解の副産物として酸素(O₂)が放出される。
光化学反応でつくられる3つの物質を答えよ。
ATP、NADPH、O₂。ATPとNADPHはカルビン回路でCO₂固定に使われ、O₂は水の分解の副産物として大気中に放出される。
この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
次の文中の空欄( ア )〜( オ )に入る適切な語句を答えよ。
光合成の第1段階である光化学反応は( ア )膜で行われる。光合成色素の( イ )が光エネルギーを吸収し、( ウ )系IIとI系を通じて電子が伝達される。( ウ )系IIでは( エ )が分解されて酸素が放出される。電子は最終的にNADP⁺に渡されて( オ )が生成される。
ア:チラコイド イ:クロロフィル ウ:光化学 エ:水(H₂O) オ:NADPH
光化学反応の流れは「光→光化学系II→電子伝達→光化学系I→NADPH」です。光化学系IIで水が分解されて酸素が発生する点が重要です。
(1) 光合成のチラコイド膜でのATP合成のしくみと、呼吸のミトコンドリア内膜でのATP合成のしくみの共通点を、「H⁺濃度勾配」「ATP合成酵素」の語を用いて50字以内で述べよ。
(2) 光合成で放出される酸素が水に由来することを示した実験(ルーベンの実験)の概要を、「¹⁸O」の語を用いて50字以内で述べよ。
(1) どちらも電子伝達によりH⁺濃度勾配が形成され、H⁺がATP合成酵素を通ってATPが合成される。(44字)
(2) ¹⁸Oで標識した水を与えると放出されるO₂に¹⁸Oが含まれ、酸素が水に由来することが証明された。(45字)
(1) 化学浸透(H⁺濃度勾配→ATP合成酵素→ATP)の原理は、光合成と呼吸で共通しています。
(2) ルーベンは1941年にこの実験を行いました。¹⁸O標識したCO₂を与えた場合はO₂に¹⁸Oが含まれないことから、光合成で放出されるO₂はCO₂ではなく水に由来することが明らかになりました。