光化学反応でつくられたATPとNADPHは、いわば「充電されたバッテリー」です。
この記事では、そのバッテリーのエネルギーを使ってCO₂から有機物をつくる「カルビン回路」を学びます。
空気中のCO₂が植物の体に変わる──その魔法のような反応のしくみを見ていきましょう。
カルビン回路(カルビン・ベンソン回路)は、葉緑体のストロマで行われる光合成の第2段階です。 光化学反応でつくられたATPとNADPHのエネルギーを使って、CO2を有機物に変換します。
クエン酸回路と同じく「回路」と名前がついているのは、最後の産物が最初の基質を再生する循環的な反応経路だからです。
CO2 3分子を固定するごとに、G3P 1分子が「純利益」として回路から取り出され、グルコースなどの有機物の合成に使われます。 つまり、グルコース1分子をつくるにはカルビン回路を6回転させる必要があります。
光合成の2つの段階を統合すると、全体の流れは次のようになります。
| 段階 | 場所 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| 光化学反応 | チラコイド膜 | 光、H2O | ATP、NADPH、O2 |
| カルビン回路 | ストロマ | ATP、NADPH、CO2 | G3P → グルコース |
つまり光合成とは、光エネルギー → ATP・NADPHの化学エネルギー → 有機物の化学エネルギーという2段階のエネルギー変換です。 光化学反応がエネルギーを「充電」し、カルビン回路がそのエネルギーで「製品(有機物)をつくる」工場のようなものです。
RuBisCO(ルビスコ)は地球上で最も量が多いタンパク質と推定されています。しかし、1分子のRuBisCOが1秒間に固定できるCO₂はわずか3分子程度と、酵素としては非常に遅い反応速度です。しかもRuBisCOはCO₂だけでなくO₂とも反応する(光呼吸)ため、効率がさらに下がります。植物が大量のRuBisCOをもっているのは、この「効率の悪さ」を量でカバーするためです。C4植物やCAM植物(5-7参照)は、この問題への進化的な解決策です。
呼吸と光合成は逆方向の反応です。光合成は光エネルギーでCO₂と水から有機物をつくり、呼吸は有機物を分解してATPをつくります。しかし、どちらも電子伝達系とH⁺濃度勾配によるATP合成という共通の原理を使っています。
この節で学んだ基本事項を確認しましょう。
カルビン回路の反応の場と、CO₂を固定する酵素の名前を答えよ。
反応の場:葉緑体のストロマ。CO₂固定酵素:RuBisCO(ルビスコ)。
カルビン回路で消費される2つの物質を答え、それぞれがどこでつくられるか述べよ。
ATPとNADPH。どちらも光化学反応(チラコイド膜)でつくられる。
グルコース1分子を合成するためにカルビン回路は何回転する必要があるか。理由とともに答えよ。
6回転。グルコース(C₆H₁₂O₆)には炭素が6個含まれており、カルビン回路1回転でCO₂ 1分子(炭素1個)が固定されるため。
この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
次の文中の空欄( ア )〜( オ )に入る適切な語句を答えよ。
カルビン回路は葉緑体の( ア )で行われる。CO₂は( イ )という酵素のはたらきでC₅化合物の( ウ )に固定され、C₃化合物の( エ )が生じる。( エ )は光化学反応でつくられた( オ )とNADPHを使ってG3Pに還元される。
ア:ストロマ イ:RuBisCO(ルビスコ) ウ:RuBP エ:PGA オ:ATP
カルビン回路の流れは「CO₂ + RuBP → PGA → G3P → RuBP再生」の循環です。RuBisCOは地球上で最も量が多いタンパク質とされています。
(1) 光合成の2つの段階(光化学反応とカルビン回路)の関係を、「ATP」「NADPH」の語を用いて50字以内で述べよ。
(2) カルビン回路が以前「暗反応」と呼ばれていたが、現在はその呼び方が避けられている。その理由を30字以内で述べよ。
(1) 光化学反応でつくられたATPとNADPHが、カルビン回路でCO₂から有機物を合成するために使われる。(45字)
(2) カルビン回路はATP・NADPHが必要なため暗所では長時間進まないから。(30字)
(1) 光化学反応がエネルギーを「準備」し、カルビン回路がそのエネルギーで「製品(有機物)をつくる」という関係です。
(2) 「暗反応」という名前は「暗所でも進む」と誤解されがちですが、実際にはATPとNADPHの供給が止まれば反応は止まります。