あなたの体は約37兆個の細胞からできていますが、そのすべての出発点はたった1個の受精卵です。
受精卵は精子と卵が出会ってできるもの──では、精子と卵はどのようにしてつくられるのでしょうか。
染色体数を半分にする「減数分裂」から、新しい個体の始まりである「受精」までを見ていきましょう。
体細胞分裂では、分裂後の細胞はもとの細胞と同じ染色体数(2n)をもちます。 しかし、配偶子(精子・卵)をつくるときには、染色体数を半分(n)にする特別な細胞分裂が必要です。 これを減数分裂といいます。
なぜ半分にする必要があるのか──受精のときに精子(n)と卵(n)が合体して受精卵(2n)になるからです。 もし配偶子が2nのままなら、受精卵は4nになり、世代を重ねるごとに染色体数が倍々に増えてしまいます。
減数分裂は2回の連続した分裂からなりますが、DNAの複製は最初の1回だけです。
結果として、1個の母細胞(2n)から4個の細胞(n)が生じます。
精原細胞(2n)→ 一次精母細胞(2n)→ 第一分裂 → 二次精母細胞(n)× 2 → 第二分裂 → 精細胞(n)× 4 → 変態 → 精子(n)× 4
1個の一次精母細胞から4個の精子がつくられます。精子は小さく、鞭毛で運動します。
卵原細胞(2n)→ 一次卵母細胞(2n、大きく成長)→ 第一分裂 → 二次卵母細胞(n)+ 第一極体(n)→ 第二分裂 → 卵(n)+ 第二極体(n)
1個の一次卵母細胞から1個の卵しかできません。残りの3個は極体となり、やがて退化します。 卵は大きく、卵黄(発生に必要な栄養分)を蓄えています。
| 精子形成 | 卵形成 | |
|---|---|---|
| 母細胞1個からの産物 | 精子4個 | 卵1個+極体3個 |
| サイズ | 小さい | 大きい(卵黄を蓄える) |
| 運動性 | あり(鞭毛) | なし |
| 不均等分裂 | なし(均等) | あり(卵に栄養を集中) |
卵形成で1個の卵しかできないのは「無駄」に見えますが、合理的な理由があります。発生の初期段階では、受精卵は外部から栄養を取り込めないため、卵黄として蓄えた栄養で成長する必要があります。4等分すると各細胞の栄養が1/4になり不十分です。そこで1個の大きな卵に栄養を集中し、残りの3個(極体)は退化させるのです。
受精とは、精子と卵が融合して受精卵(2n)をつくることです。 精子(n)と卵(n)の核が合体することで、もとの染色体数(2n)が回復します。
受精には、同じ種の精子だけを受け入れる種の認識のしくみと、1つの卵に複数の精子が入るのを防ぐ多精拒否のしくみがあります。
ウニの受精は動物の受精のしくみを理解する代表的なモデルです。
多精拒否は、受精卵の染色体数を正常に保つために不可欠なしくみです。 複数の精子が入ると3n以上になり、正常な発生ができません。
この節で学んだ基本事項を確認しましょう。
減数分裂で染色体数が半減するのは第一分裂・第二分裂のどちらか。その理由を述べよ。
第一分裂。相同染色体が対合して二価染色体をつくり、後期に相同染色体ごとに両極に分かれるため、娘細胞の染色体数はもとの半分(n)になる。
精子形成と卵形成の最大の違いを「極体」の語を用いて述べよ。
精子形成では1個の母細胞から4個の精子が均等にできるが、卵形成では不均等分裂により1個の大きな卵と3個の小さな極体ができる。極体はやがて退化する。
この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
次の文中の空欄( ア )〜( オ )に入る適切な語句を答えよ。
配偶子をつくる際の細胞分裂を( ア )という。( ア )の第一分裂では相同染色体どうしが( イ )して二価染色体をつくる。精子形成では1個の母細胞から( ウ )個の精子ができ、卵形成では( エ )個の卵と3個の( オ )ができる。
ア:減数分裂 イ:対合 ウ:4 エ:1 オ:極体
減数分裂では2回の分裂で染色体数が半減します。精子形成は均等分裂(4個の精子)、卵形成は不均等分裂(1個の卵+3個の極体)です。
ヒト(2n = 46)の精子形成に関する次の問いに答えよ。
(1) 一次精母細胞の染色体数は何本か。
(2) 二次精母細胞の染色体数は何本か。
(3) 精子の染色体数は何本か。
(4) 染色体の独立した組み合わせだけで何通りの精子ができるか。
(1) 46本(2n = 46)
(2) 23本(n = 23、第一分裂で半減)
(3) 23本(n = 23、第二分裂では染色体数は変わらない)
(4) 223 = 約840万通り
染色体数は第一分裂で半減し、第二分裂では変わりません。第二分裂で変化するのはDNA量(各染色体が2本の染色分体から1本になる)です。23対の相同染色体が独立に分配されるので、2²³通りの組み合わせが可能です。