第8章 植物の環境応答

光受容体と光応答
─ 植物が光を「見る」しくみ

植物には「目」がありません。しかし、光の色(波長)を正確に見分けて、発芽するかどうか、どちらに曲がるか、茎を伸ばすかどうかを決めています。
この「目」の役割を果たすのが光受容体というタンパク質です。
赤色光と遠赤色光のスイッチで発芽を制御するフィトクロム、青色光で茎を曲げるフォトトロピン──植物が光を「見る」しくみを探っていきましょう。

1光受容体とは ─ 植物の「光センサー」

植物は、特定の波長の光を吸収して構造が変化するタンパク質を使って光環境を感知しています。このタンパク質を光受容体といいます。光受容体が光を受け取ると、細胞内のシグナル伝達経路が活性化され、遺伝子の発現パターンが変わることで、発芽・屈曲・伸長抑制など、さまざまな応答が引き起こされます。

たとえるなら、光受容体は「特定の色にだけ反応するスイッチ」です。赤い光でONになるスイッチ、青い光でONになるスイッチがあり、植物はこれらを使い分けて環境を判断しています。

植物の主な光受容体は次の3種類です。

光受容体 吸収する光 おもな関与
フィトクロム 赤色光(660 nm)/ 遠赤色光(730 nm) 光発芽種子の発芽、花芽形成、脱黄化
フォトトロピン 青色光(450 nm付近) 光屈性、気孔の開口、葉緑体の光定位運動
クリプトクロム 青色光 胚軸・茎の伸長抑制、脱黄化
ポイント:3つの光受容体の整理
  • 赤色光を受容 → フィトクロム(発芽・花芽形成)
  • 青色光を受容 → フォトトロピン(屈曲・気孔の開口)とクリプトクロム(伸長抑制)
  • フォトトロピンは「光の方向」に対する応答、クリプトクロムは「光の有無」に対する応答に関わる、と整理するとわかりやすい

2フィトクロム ─ 赤色光と遠赤色光の「スイッチ」

「懐中電灯の赤い光を当てると種が芽を出し、別の色の光を当てると芽が出ない」──このような現象を聞いたことはあるでしょうか。この現象の背景にあるのがフィトクロムという光受容体です。

Pr型とPfr型の可逆的変換

フィトクロムには2つの型があります。

  • Pr(赤色光吸収型):赤色光(660 nm)を吸収するとPfr型に変化する
  • Pfr(遠赤色光吸収型):遠赤色光(730 nm)を吸収するとPr型に戻る

つまり、赤色光と遠赤色光の照射によって、2つの型が可逆的に変換されます。Pfr型が活性型であり、核内に移行して特定の遺伝子の発現を制御します。

ポイント:フィトクロムの型変換

Pr型 ──赤色光(R)Pfr型(活性型) ──遠赤色光(FR)→ Pr

発展:Pfr型の分子メカニズム 生物

Pfr型フィトクロムは核内へ移行し、転写因子であるPIF(Phytochrome Interacting Factor)と結合してPIFを分解させます。PIFは暗所で伸長成長を促進する遺伝子を活性化しているため、Pfr型によるPIF分解は伸長抑制(脱黄化)につながります。また、Pfr型はジベレリン合成遺伝子の発現を促進し、光発芽種子の発芽を誘導します。

3光発芽種子 ─ 「最後の光」で運命が決まる

発芽に光を必要とする種子を光発芽種子といいます。代表例はレタス、タバコ、マツヨイグサなどです。逆に、暗所で発芽する種子を暗発芽種子といい、カボチャ、ケイトウ、キュウリなどが該当します。

赤色光・遠赤色光の交互照射実験

光発芽種子に赤色光(R)と遠赤色光(FR)を交互に照射する実験は、フィトクロムの理解に欠かせない重要実験です。

照射の順序発芽率
暗所(対照)低い
R → 暗所高い
R → FR → 暗所低い
R → FR → R → 暗所高い
R → FR → R → FR → 暗所低い

この実験から読み取れるのは、「最後に照射された光が赤色光であれば発芽し、遠赤色光であれば発芽しない」ということです。これは、フィトクロムが最後の光でPfr型(活性型)になっているかPr型に戻っているかで決まります。

光発芽種子は「光でスイッチON」になるのか
赤色光が種子に照射される
フィトクロムがPr型からPfr型(活性型)に変換される
Pfr型が核内でジベレリン合成遺伝子の発現を促進する
ジベレリンがアブシシン酸による発芽抑制を解除する
種子が発芽する

光発芽種子の生態的意義

光発芽種子は一般に種子が小さく、貯蔵養分が少ないものが多い傾向にあります。発芽後すぐに光合成ができる明るい環境でのみ発芽することで、芽生えの生存率を高めていると考えられています。

植物の葉は赤色光を光合成に使って吸収しますが、遠赤色光はほとんど吸収せずに透過・反射します。そのため、林冠が閉じた森林の林床では遠赤色光の割合が高くなります。光発芽種子はこのような場所ではPfr型が少ないため発芽せず、木が倒れてギャップ(林冠の隙間)ができて赤色光が届くようになると発芽する──というしくみになっています。

発展:R/FR比と植物の生存戦略 生物

赤色光と遠赤色光の比(R/FR比)は、植物にとって「上に光を遮る植物があるかどうか」を知る指標になります。直射日光のR/FR比は約1.2ですが、葉を透過した光ではR/FR比が大きく低下します。植物はフィトクロムを通じてR/FR比を感知し、種子の発芽だけでなく、茎の伸長促進(避陰反応)や花芽形成のタイミングなど、さまざまな応答に利用しています。

4光屈性 ─ 植物はなぜ光に向かって曲がるのか

植物の茎が一方向からの光に向かって屈曲する現象を光屈性(正の光屈性)といいます。光屈性はダーウィン父子の実験以来、植物生理学の歴史を築いてきたテーマです。

光屈性のしくみ ─ オーキシンの偏差分布

光屈性のしくみは、イネ科植物の幼葉鞘(ようようしょう)を用いて詳しく調べられてきました。

  1. 幼葉鞘の先端部にあるフォトトロピン青色光を受容する
  2. 光を受容すると、先端部の細胞でオーキシン排出輸送体の分布が変化し、オーキシンが光の当たらない側(陰側)に多く移動する
  3. オーキシンは先端から下方へ極性移動し、陰側の細胞に多く届く
  4. 陰側でオーキシン濃度が高くなり、陰側の細胞の伸長成長が促進される
  5. 左右で伸長の差が生じ、茎が光の方向に屈曲する
ポイント:光屈性の要点整理
  • 光の受容部位:幼葉鞘の先端部
  • 光受容体:フォトトロピン(青色光を受容)
  • 屈曲の原因:オーキシンが陰側に偏って分布 → 陰側の伸長成長が促進
  • 屈曲する部位:先端より下の伸長域

光屈性の研究の歴史

光屈性の研究は、植物ホルモン(オーキシン)の発見へとつながった歴史的に重要なテーマです。

  • ダーウィン父子(1880年):幼葉鞘の先端部が光を受容し、それより下の部分が屈曲することを示した
  • ボイセン・イェンセン(1913年):先端から下へ「何らかの物質」が移動して屈曲を引き起こすことを示した。先端と下部の間にゼラチン(水溶性物質を通す)を挟むと光屈性が起きたが、雲母(不透過性)を挟むと光屈性が起きなかった。このことから、先端部から化学物質が移動して下部に作用することを証明した
  • パール(1919年):幼葉鞘の先端部を半分ずらして(中心からずらして)載せると、ずらした方向と反対側に屈曲が起きた。このことから、先端部から下方へ移動する物質が成長を促進することを示した
  • ウェント(1928年):寒天を用いた実験でオーキシンの存在を証明し、陰側へのオーキシンの偏差分布を示した
発展:根の光屈性と重力屈性 生物

茎は光に向かって屈曲しますが(正の光屈性)、根は光から遠ざかる方向に屈曲します(負の光屈性)。この違いはオーキシンに対する感受性の差で説明されます。茎ではオーキシン濃度が高いほど伸長が促進されますが、根はオーキシンに対する感受性が高く、同じ濃度でも伸長が抑制されます。そのため、オーキシンが多く集まった陰側では茎は伸長促進、根は伸長抑制となり、屈曲の方向が逆になります。

5フォトトロピンとクリプトクロム ─ 青色光の受容体

フォトトロピンのはたらき

フォトトロピンは青色光(波長約450 nm)を受容する光受容体です。光屈性の光受容体として有名ですが、そのはたらきは屈曲だけにとどまりません。

  • 光屈性:幼葉鞘・茎の光への屈曲
  • 気孔の開口:フォトトロピンが青色光を受容すると、孔辺細胞へのK+の流入が促進され、浸透圧上昇 → 吸水 → 膨圧上昇 → 気孔開口
  • 葉緑体の光定位運動:弱光下では葉緑体が光を受けやすい位置に集合し(集合反応)、強光下では光から逃げる位置に移動する(逃避反応)

クリプトクロムのはたらき

クリプトクロムも青色光を吸収する色素タンパク質ですが、フォトトロピンとは異なるはたらきをもちます。おもに胚軸や茎の伸長成長の抑制に関与しています。暗所で育てた芽生え(黄化芽生え)に青色光を当てると伸長が抑制されて正常な緑色の芽生え(脱黄化)になりますが、この反応にクリプトクロムが関わっています。

ポイント:フォトトロピン vs クリプトクロムの違い
  • どちらも青色光を吸収するが、関与する応答が異なる
  • フォトトロピン:光の方向強さに対する応答(屈曲・気孔・葉緑体運動)
  • クリプトクロム:光の有無に対する応答(伸長抑制・脱黄化)

6光形態形成 ─ 光が植物の「かたち」を決める

光が植物の形態形成に影響を与える現象を、広く光形態形成といいます。暗所で育てた芽生えと明所で育てた芽生えを比べてみると、その違いは一目瞭然です。

暗所で育てた芽生え(黄化芽生え) 明所で育てた芽生え
茎・胚軸 細長く伸びる(徒長) 短く太い
小さく展開しない 大きく展開する
黄白色(クロロフィルが合成されない) 緑色

暗所の芽生えが光に当たると、フィトクロム・クリプトクロムなどの光受容体が光を受容し、伸長成長の抑制・葉の展開・クロロフィル合成が始まります。この過程を脱黄化(光形態形成の開始)といいます。

暗所の芽生えはなぜ細長く伸びるのか
暗所では光受容体(フィトクロム・クリプトクロム)が不活性型のまま
伸長成長を抑制する遺伝子が活性化されない
芽生えは「まず光を見つける」ことを優先して、茎を急速に伸ばす
葉の展開やクロロフィル合成にエネルギーを使わず、とにかく上へ伸びる(黄化芽生え)

7この節を俯瞰する ─ 光受容体が環境応答をつなぐ

植物は動くことができない代わりに、光受容体を使って光環境をきめ細かく「読み取り」、それに合わせて形や成長を変えています。赤色光のフィトクロム、青色光のフォトトロピンとクリプトクロム──これらが植物ホルモン(オーキシン・ジベレリン)と連携することで、発芽から屈曲、花芽形成まで、植物の一生にわたる環境応答が制御されています。

他の節とのつながり

つながりマップ

  • 8-1 植物ホルモン → オーキシンの偏差分布による光屈性、ジベレリンによる発芽促進はホルモンの章で学んだしくみの応用。
  • 8-3 花芽形成と光周性 → フィトクロムは花芽形成(光周性)にも深く関わる。次節で詳しく扱う。
  • 4-7 細胞間の情報伝達 → 光受容体 → シグナル伝達 → 遺伝子発現調節という流れは、細胞間コミュニケーションの一般原理と同じ。
  • 6-5 遺伝子発現調節 → Pfr型フィトクロムによる転写因子(PIF)の制御は、選択的遺伝子発現の具体例。

8まとめ

  • 光受容体:光を吸収して構造が変化し、シグナル伝達を引き起こすタンパク質。フィトクロム・フォトトロピン・クリプトクロムの3種類
  • フィトクロム:赤色光/遠赤色光でPr型とPfr型が可逆的に変換。Pfr型が活性型。光発芽種子の発芽・花芽形成に関与
  • 光発芽種子:発芽に光を必要とする種子(レタス・タバコなど)。最後に赤色光が照射されると発芽し、遠赤色光では発芽しない
  • 光屈性:茎が光に向かって屈曲する現象。フォトトロピンが青色光を受容 → オーキシンが陰側に偏る → 陰側の伸長促進。ダーウィン父子 → ボイセン・イェンセン(ゼラチン/雲母の実験)→ パール(先端部ずらし実験)→ ウェント(寒天実験)の研究史が重要
  • フォトトロピン:青色光受容体。光屈性・気孔開口・葉緑体の光定位運動に関与
  • クリプトクロム:青色光受容体。胚軸・茎の伸長抑制・脱黄化に関与
  • 光形態形成:光が植物の形態を決定する現象。黄化芽生え → 脱黄化はその代表例

9確認テスト

この節で学んだ基本事項を確認しましょう。

Q1

植物の3つの光受容体の名前を挙げ、それぞれが吸収する光の色を答えよ。

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解答

フィトクロム(赤色光/遠赤色光)、フォトトロピン(青色光)、クリプトクロム(青色光)。

Q2

フィトクロムのPr型とPfr型について、それぞれが吸収する光と型変換の関係を説明せよ。

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解答

Pr型は赤色光(660 nm)を吸収してPfr型に変化し、Pfr型は遠赤色光(730 nm)を吸収してPr型に戻る。この変換は可逆的であり、Pfr型が活性型として遺伝子発現を制御する。

Q3

光発芽種子に赤色光→遠赤色光→赤色光→遠赤色光の順に照射した場合、発芽するかしないか。理由とともに答えよ。

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解答

発芽しない。最後に照射された光が遠赤色光なので、フィトクロムがPr型(不活性型)に戻り、ジベレリン合成が促進されないため。

Q4

光屈性において、光の受容体は何か。また、茎が光の方向に屈曲するしくみをオーキシンに関連づけて説明せよ。

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解答

光受容体はフォトトロピン(青色光受容体)。フォトトロピンが青色光を受容すると、オーキシンが光の当たらない側(陰側)に多く移動し、陰側の細胞の伸長成長が促進されるため、茎が光の方向に屈曲する。

Q5

フォトトロピンとクリプトクロムはいずれも青色光を吸収するが、関与する応答が異なる。それぞれのおもなはたらきを1つずつ答えよ。

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解答

フォトトロピン:光屈性(または気孔の開口)。クリプトクロム:胚軸・茎の伸長抑制(または脱黄化)。

10入試問題演習

この節で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

8-2-1A 基礎知識穴埋め

次の文中の空欄( ア )〜( カ )に入る適切な語句を答えよ。

植物の光受容体には、A.( ア )、B.( イ )、C.( ウ )の3種類がある。次の(1)〜(4)はA〜Cのいずれについて述べたものか、記号で答えよ。

(1) 青色光を受容し、光屈性における光受容体としてはたらく。…( エ )

(2) 赤色光吸収型と遠赤色光吸収型が、光の照射によって可逆的に変化する。…( オ )

(3) 青色光を受容し、茎の伸長成長の抑制に関与する。…( カ )

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解答

ア:フィトクロム イ:フォトトロピン ウ:クリプトクロム エ:B オ:A カ:C

解説

3つの光受容体の名前・吸収する光・関与する応答を正確に対応づける知識問題です。フォトトロピンとクリプトクロムはどちらも青色光を吸収しますが、関与する応答が異なります(フォトトロピン=光屈性・気孔の開口、クリプトクロム=伸長抑制)。

8-2-2A 基礎知識穴埋め

次の文中の空欄( ア )〜( エ )に入る適切な語句を答えよ。

光発芽種子に( ア )を照射すると、( イ )はPfr型に変化する。Pfr型は、胚で( ウ )の合成を促進する。( ウ )は、( エ )による発芽抑制を解除し、発芽が始まる。

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解答

ア:赤色光 イ:フィトクロム ウ:ジベレリン エ:アブシシン酸

解説

光発芽種子の発芽メカニズムを問う定番問題です。赤色光 → フィトクロムPfr型 → ジベレリン合成促進 → アブシシン酸による抑制の解除 → 発芽、という一連の流れを理解しましょう。

B 標準レベル

8-2-3B 標準論述実験考察

光発芽種子に、赤色光(R)と遠赤色光(FR)を下表のように照射し、暗所に置いたときの発芽率を調べた。

実験照射の順序発芽率
1暗所のみ8%
2R → 暗所98%
3R → FR → 暗所6%
4R → FR → R → 暗所96%

(1) この実験結果から、光発芽種子の発芽に関してどのようなことがいえるか。40字程度で述べよ。

(2) 林冠が閉じた森林の林床で光発芽種子が発芽しにくい理由を、フィトクロムの型変換と関連づけて60字以内で説明せよ。

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解答

(1) 最後に照射した光が赤色光であれば発芽が促進され、遠赤色光であれば発芽が抑制される。(41字)

(2) 植物の葉は赤色光を吸収するため、林床では遠赤色光の割合が高くなり、フィトクロムがPr型のまま維持されるので発芽しない。(57字)

解説

(1) 実験2と3の比較から「赤色光の後に遠赤色光を当てると効果が打ち消される」こと、実験3と4の比較から「さらに赤色光を当てると効果が回復する」ことがわかります。つまり、最後の光が赤色光かどうかで決まります。

(2) 植物の葉のクロロフィルは赤色光を光合成に利用して吸収しますが、遠赤色光はほとんど透過します。そのため、林床に届く光はR/FR比が低く、フィトクロムはPfr型(活性型)になりにくいのです。

採点ポイント((2)の論述・6点満点の場合)
  • 葉が赤色光を吸収する点に言及(2点)
  • 林床で遠赤色光の割合が高いことに言及(2点)
  • Pr型が維持されることに言及(2点)
8-2-4B 標準論述

(1) 光屈性において、光の受容部位と屈曲部位はそれぞれどこか。

(2) 光屈性が起きるしくみを「フォトトロピン」「オーキシン」「陰側」の語を用いて60字以内で述べよ。

(3) フォトトロピンが青色光を受容することで起こる反応を、光屈性以外に2つ挙げよ。

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解答

(1) 受容部位:幼葉鞘の先端部。屈曲部位:先端より下の伸長域。

(2) フォトトロピンが青色光を受容するとオーキシンが陰側に偏って分布し、陰側の細胞の伸長成長が促進されて茎が光の方向に屈曲する。(60字)

(3) 気孔の開口、葉緑体の光定位運動(光逃避反応)。

解説

(1) ダーウィン父子の実験が示した重要な事実です。光の受容と屈曲の場所が異なるということは、先端から下へ「何か」が移動していることを意味します。

(2) フォトトロピン → オーキシン排出輸送体の分布変化 → オーキシンの陰側偏在 → 陰側伸長促進 → 屈曲、という因果関係を整理して書きましょう。

(3) フォトトロピンの機能は光屈性だけでなく、気孔の開口(K+流入促進)や葉緑体の光定位運動にも及びます。

C 発展レベル

8-2-5C 発展論述実験考察

ある研究者が、葉に光が照射された際に気孔が開くしくみを調べた。以下の問いに答えよ。

(1) 気孔が開くしくみを、「フォトトロピン」「細胞壁」「膨圧」の語を用いて100字程度で説明せよ。

(2) 光発芽種子が光を必要とすることの生態的意義について、種子の特徴と環境の2つの観点から60字以内で述べよ。

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解答

(1) 孔辺細胞のフォトトロピンが青色光を吸収すると、孔辺細胞の浸透圧が高まり吸水して膨圧が上昇する。孔辺細胞の細胞壁は気孔側が厚く伸長しにくいため、孔辺細胞が外側に湾曲し気孔が開く。(90字)

(2) 光発芽種子は小さく貯蔵養分が少ないため、発芽後すぐに光合成が可能な明るい環境でのみ発芽する。(46字)

解説

(1) フォトトロピンが青色光を受容 → K+流入 → 浸透圧上昇 → 吸水 → 膨圧上昇 → 細胞壁の不均一な厚さにより湾曲 → 気孔開口、という流れです。細胞壁の構造にまで言及できるかが発展レベルのポイントです。

(2) 光発芽種子の生態的意義を問う頻出論述問題です。「種子が小さい(貯蔵養分が少ない)」と「明るい場所でのみ発芽する利点」の両方を含めましょう。

採点ポイント((1)の論述・8点満点の場合)
  • フォトトロピンが青色光を受容する点(2点)
  • 浸透圧上昇→吸水→膨圧上昇の流れ(2点)
  • 細胞壁の厚さの不均一性に言及(2点)
  • 孔辺細胞が湾曲して気孔が開く結果(2点)